骨補填材を使用しない「グラフトレスサイナスリフト」の症例
上顎の奥歯を失った部分にインプラント治療を行う際、大きな問題となることの一つが上顎洞までの骨の高さです。
上顎の奥歯の上には「上顎洞」と呼ばれる空洞があるため、歯を失ってから時間が経過すると、インプラントを支えるための骨が非常に薄くなっていることがあります。
今回ご紹介する症例では、術前のCTで確認すると、インプラント埋入予定部位の残存骨高は約1.7mmしかありませんでした。
従来であればラテラルウィンドウ法を検討するような骨量
残存骨が十分にある場合には、歯槽頂側から上顎洞粘膜を挙上するクレスタルアプローチが可能です。
しかし、今回のように1〜2mm程度しか骨が残っていない症例では、通常のクレスタルアプローチでは難易度が高く、従来であれば上顎洞を横から開窓するラテラルウィンドウ法を検討するようなケースです。
ラテラルウィンドウ法では、上顎洞粘膜を大きく挙上し、そのスペースに異種骨などの骨補填材を填入して骨を造成する方法があります。
今回は骨補填材を使わない「グラフトレス」
今回の症例では、ラテラルウィンドウから大量の骨補填材を使用する方法ではなく、
グラフトレスサイナスリフト
を選択しました。
上顎洞粘膜を慎重に挙上し、インプラントを同時に埋入。
骨補填材を入れるのではなく、挙上した上顎洞粘膜と既存骨の間にスペースを確保し、患者さん自身の骨形成を利用する方法です。
つまり、
「骨を足してインプラントを入れる」のではなく、骨が形成される環境をつくってインプラントを安定させていく
という考え方です。
約4か月で最終補綴まで完了
術後はインプラントの安定と骨形成を確認しながら経過観察を行い、約4か月で最終的な歯を装着することができました。
術前には約1.7mmしかなかった残存骨でも、適切な診断と術式を選択することで、大がかりな骨補填を行わずにインプラント治療を完了できるケースがあります。
もちろん、グラフトレスサイナスリフトがすべての患者さんに行えるわけではありません。
上顎洞の形態、残存骨の状態、骨質、インプラントの初期固定、全身状態などを総合的に診断する必要があります。
当院では、CTによる三次元的な診断を行い、できるだけ患者さんの負担を抑えながら、症例ごとに適した治療方法を検討しています。

